進歩性 主引用例に周知慣用技術を適用することは容易であるとしても、この適用において、プラスアルファの構成を採用することで進歩性が認められる。

 進歩性 主引用例に周知慣用技術を適用することは容易であるとしても、この適用において、プラスアルファの構成を採用することで進歩性が認められる。

 

判例No.26 平成20年(行ケ)第10121号 審決取消請求事件

 

※以下は、上記判例と、差し戻された審判についての独自の見解です。

 

 1.実務上の指針

 主引用例に周知慣用技術を適用することは容易であるとしても、この適用において、プラスアルファの構成(付加構成)を採用することで、進歩性が認められる可能性が高い。

 

 公知の構成に周知慣用技術を適用する場合、この適用で得られる発明は、進歩性はなさそうである。しかし、発明の進歩性の有無を考える時に、この適用において、プラスアルファの構成を採用していないかを検討する。プラスアルファの構成があれば、発明は進歩性を有する可能性がある。特に、プラスアルファの構成を採用することで特有の作用効果が得られるようになった場合、その発明は進歩性を有する可能性が高い。

 このような場合、プラスアルファの構成を請求項に反映する補正をする。また、意見書では、プラスアルファの構成による特有の作用効果を述べることができる。

 

2.相違点

 特願2003-102825号の請求項1に係る発明では、「切換レバーによる回動伝達部にラチェット機構を有する」としているのに対して、主引用例(特開平8-750

18号公報)では、その様な構成を有していない。

 特願2003-102825号の請求項1に係る発明と、主引用例(特開平8-750

18号公報)とは、本願発明が「切換レバーによる回動伝達部にラチェット機構を有する」としているのに対して主引用例ではその様な構成を有していない点で相違する

 

 特願2003-102825号の請求項1は、次の「」内と通りです。

「【請求項1】 蛇口と連結可能な原水流入口と,原水をそのままストレート状またはシャワー状に吐水する各原水吐出口と,浄水器に接続可能な原水送水口とを備えた切換弁本体並びに取っ手部分を備えた切換レバーとを有する切換弁であって,

該切換弁本体の内部に,該切換レバーと連動して回動する回転軸の回動操作により各原水吐出口または原水送水口への水路の切り換えを行う水路切換機構及び該切換レバーによる回動伝達部にラチェット機構とを有するとともに,該切換レバーが,その取っ手部分の上面側または下面側の少なくとも一部分に,前記回転軸に対して常に平行となる略平面部を有する切換弁。」

 

3.争点

 相違点に関して、主引用例に、副引用例のラチェット機構を適用することは容易であるか。

 

4.上記判例の内容

 上記判例では、主引用例に、副引用例のラチェット機構を適用することは容易であるとする論理構成が不十分であるとして、審決が取り消された。

 

5.差し戻された審判

 審決取消で差し戻された審判では、「ラチェット機構は各種分野で使用されている周知慣用技術にすぎず、引用発明に当該周知慣用技術を適用して,上記相違点に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得た事項である」との記載を含む拒絶理由通知が出された。

 これに対して、出願人は、ラチェット機構の適用により「前記切換レバーを押し下げる度にまたは押し上げる度に水路の切換が順次行われる」ことを、プラスアルファの構成として請求項1に補正で反映した。

 このプラスアルファの構成により、「切換レバーを一方向に押し倒すだけで順次水路の切り換えが行えるので、指が濡れていたり、手に物を持った状態等でも切り換え操作が簡単、かつ安全に行える。」という本件発明に特有の作用効果が得られる点が明確になった(ここで、「」は特願2003-102825号からの抜粋です)。

 その結果、本件発明は、特許されている。

 

「【請求項1】

 蛇口と連結可能な原水流入口と、原水をそのままストレート状またはシャワー状に吐水する各原水吐出口と、浄水器に接続可能な原水送水口とを備えた切換弁本体並びに取っ手部分を備えた切換レバーとを有する切換弁であって、

 該切換弁本体の内部に、該切換レバーと連動して回動する回転軸の同一方向のみへの回動操作により各原水吐出口または原水送水口への水路の順次の切り換えを行う水路切換機構及び該切換レバーによる回動伝達部にラチェット機構とを有するとともに、

 前記切換レバーを押し下げる度にまたは押し上げる度に水路の切換が順次行われる切換弁。」

 

弁理士 野村俊博

進歩性 設計事項

進歩性 設計事項

 

判例No.25平成25年(行ケ)第10229号 審決取消請求事件

※以下は、独自の見解です。

 

1.実務上の指針

 本件発明は、主引用例に記載されていない特徴Xを有するとする。特徴Xは、周知技術と同様であるとする。

 このような場合、主引用例において特徴Xを採用することは設計事項であるとされ得る。

 しかし、次の条件を満たせば、特徴Xが設計事項であるとは言えない。

 

 条件:本件発明と周知技術とは、特徴Xを採用する部位(箇所)が異なることにより、両者の技術思想が異なる。

 

2.上記判例の独自解釈

2.1 前提事項

 上記の判例では、本件発明は、特許第4590247号の請求項1に係る発明(靴下の編成方法)である。

本件発明は、靴下の踵部の外側部分において、特徴X「靴下の編地面積を大きくすること」を採用している。すなわち、本件発明では、踵部の外側方向にウェール数を多めに編成している。

 主引用例(特開2003-82501号公報)は、上記の特徴Xを有していない。

 周知技術(甲11:特開2004-218131号公報)では、特徴Xを靴下の爪先部の親指側部分に採用している。

 

2.2 争点

 主引用例において、靴下の踵部の外側部分において、特徴Xを採用することは設計事項であるか。

 

2.3 判示事項(独自解釈)

 本件発明では、特徴Xを踵部の外側部分に採用することにより、人の踵の形状によりよくフィットする靴下が得られる。

 これに対し、周知技術では、特徴Xを爪先の親指側部分に採用することにより、ゴアラインが足の爪先の周縁に位置してはき心地が低下するのを解消できる。すなわち、周知技術は、「ゴアラインを構成する編糸が着用者の指先或いは指周縁に当たり不快感を生じ」ることを解消するものであり(当該「」内は特開2004-218131号公報からの抜粋です)、本件発明の技術的思想「人の踵の形状によりよくフィットする靴下」と異なる。

 したがって、主引用例において特徴Xを踵部の外側部分に採用することは、設計事項ではない。

 

 なお、次の「」内は、上記判例からの抜粋です。

 「甲11に記載されているのは,靴下の爪先部のゴアラインが足の爪先の周縁に位置してはき心地が低下するのを解消する目的で,爪先部の点に着目して親指側の編地面積を大きくするというものであって(段落【0008】),その際,爪先部と踵部の編成中心を90度変位させる発明であるとしても(【図1】),爪先部の編成にあくまでも発明の重点があるのであって,人の踵の形状によりよくフィットする靴下に関し,踵部の編成において踵部の外側を内側よりも大きくするという本件発明や,踵部の形状を非対称形とするという甲1発明とは技術思想が全く異なる。そうすると,被告が主張するように,甲11を根拠に,踵部の形状に着目して同部位の両側の編成を適宜変位させることが当業者の選択し得る設計事項ということはできないというべきである」

 

3.審査基準の参照

 本件発明においてある特徴Xを採用する部位が、周知技術や公知技術において特徴Xを採用する部位と異なることにより、新たな課題を解決したり新たな作用効果が得られる場合には、特徴Xは設計事項とはいえないと思う。

 この場合には、下記の審査基準の抜粋の(i)から(iv)のいずれにも該当しないと思えるからです。

 

 次の「」内は、特許庁の審査基準からの抜粋です。

「(1) 設計変更等請求項に係る発明と主引用発明との相違点について、以下の(i)から(iv)までのいずれか(以下この章において「設計変更等」という。)により、主引用発明から出発して当業者がその相違点に対応する発明特定事項に到達し得ることは、進歩性が否定される方向に働く要素となる。さらに、主引用発明の内容中に、設計変更等についての示唆があることは、進歩性が否定される方向に働く有力な事情となる。

(i) 一定の課題を解決するための公知材料の中からの最適材料の選択(例1)

(ii) 一定の課題を解決するための数値範囲の最適化又は好適化(例2)

(iii) 一定の課題を解決するための均等物による置換(例3)

(iv) 一定の課題を解決するための技術の具体的適用に伴う設計変更や設計的事項の採用(例4及び例5)

これらは、いずれも当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないからである。」

 

弁理士 野村俊博

進歩性 方式の置換容易性

判例No.24 平成25年(行ケ)第10277号 審決取消請求事件

 

進歩性 方式の置換容易性

以下は独自の見解です。

 

1.実務上の指針

 主引用例における発明で使用する方式(上記判例では、真空法)を、関連する技術分野における他の公知の方式(上記判例では、雰囲気法)に置き換えることは、次の(1)の審査基準の内容により容易であるように見えるが、次の(2)に該当する場合には容易でない。

 

(1)特許庁の審査基準からの抜粋:「主引用発明の課題解決のために、主引用発明に対し、主引用発明に関連する技術分野の技術手段の適用を試みることは、当業者の通常の創作能力の発揮である。」

 

(2)方式毎に特定の内容(上記判例では、材料)を採用することが本願出願時の技術常識となっており、技術常識から、主引用例における発明の内容(上記判例では、使用される材料)が、方式の違いを超えて相互に利用可能であるとはいえない。

 

2.本件発明と主引用例との比較

一致点:本件発明(特願2006-540530号公報の請求項1)と主引用例(特開2000-303132号公報)のいずれにおいても、アルミニウムのフラックスレスろう付け方法において、芯材に同じ材料(イットリウムを含む材料)を使用していること。

 

 相違点:フラックスレスろう付け方法は、本件発明では雰囲気法(管理された窒素の雰囲気で行われる方法)であるのに対し、主引用例では真空法(真空雰囲気下で行われる方法)であること。

 

 なお、次の「」内は、本件発明(特願2006-540530号公報)の請求項1の抜粋です。

【請求項1】

「管理された窒素の雰囲気下で無フラックスのろう付けによってろう付けされた部材を製造するための,重量パーセントで,少なくとも80%のアルミニウム,ならびに,Si<1.0% Fe<1.0% Cu<1.0% Mn<2.0% Mg<3.0% Zn<6.0% Ti<0.3% Zr<0.3% Cr<0.3% Hf<0.6% V<0.3% Ni<2.0% Co<2.0% In<0.3% Sn<0.3%,合計0.15%であるその他の元素それぞれ<0.05%,を含む芯材用のアルミニウム合金製の帯材または板材における,0.01~0.5%のイットリウムの使用。」

 

3.争点

主引用例において、真空法を雰囲気法に置き換えることは容易かどうか。

 

4.判示事項

 主引用例において、真空法を雰囲気法に置き換えることは容易ではない。

 その理由:アルミニウムのろう付け方法には、フラックス法とフラックスレス法があり、フラックスレス法には真空法と雰囲気法がある。「本願出願時には,ろう付け法ごとに,それぞれ特定の組成を持ったろう材や芯材が使用されることが既に技術常識となっており,ろう付け法の違いを超えて相互にろう材や芯材を容易に利用できるという技術的知見は認められない。」

 ここで、「」内は、上記判例からの抜粋です。

 

 弁理士 野村俊博

進歩性 主引用例への副引用例の適用の容易想到性

進歩性 主引用例への副引用例の適用の容易想到性

判例No. 23平成23年(行ケ)第10396号 審決取消請求事件

以下は独自の見解です。

 

1.実務上の指針

 下記(1)の場合、下記(2)(3)に該当すれば、下記(1)の適用は容易でない。

(1)本件発明の構成Xが主引用例との相違点であり、副引用例に記載された同じ構成Xを主引用例に適用すれば、本件発明に想到する。

 

(2)本件発明において構成Xで得られる技術的意義Aは、副引用例において構成Xで得られる技術的意義Bと大きく異なる。

(3)主引用例において技術的意義A、Bのいずれを得るべきかが、主引用例から不明である。

 

2.上記判例の独自見解

2.1 上記判例における前提事項

 本件発明は、特許第5220259号の請求項1に係る発明である。

 本件発明は、構成X(特許第5220259号における請求項1の下記抜粋の下線部)を備える。

 主引用例(引用文献1)には、構成Xが記載されていない。

 構成Xは、副引用例(引用文献2、3)に記載されている。

 

 特許第5220259号の請求項1は次の通りです。この請求項1の下線部は、ここでの説明のために付したものです。

 

「【請求項1】

複数の周方向に間隔を置いて配置されたバケット(18)を支持する、それに沿って軸方向に間隔を置いた位置にホイール(16)を有し、かつ軸線の周りで回転可能なロータ(14)と、

周方向に間隔を置いて配置された翼形部(26)と該翼形部の対向する端部に配置された内側及び外側バンド(28、29)とを有する、軸方向に間隔を置いて配置された周方向のノズル(24)列と、を含み、

前記軸方向に間隔を置いて配置されたバケットと前記ノズル列とが、少なくとも1対の軸方向に間隔を置いて配置されたタービン段を形成し、

前記バケットが、該バケットを前記ロータホイールに固定するためのダブテール(20)と該バケットの半径方向内端部に沿ったプラットフォーム(40)とを有し、前記プラットフォームと前記翼形部と前記内側及び外側バンドと前記バケットとが、タービンを通る流体流れ用の流路(10)の一部を形成し、

前記ホイールの1つの上にある前記バケットダブテールが、前記プラットフォームから半径方向内側の位置に沿った前記ノズル列の1つに向かってほぼ軸方向に延びる突出部(42、44)を支持し、また前記1つのノズル列のノズルが、ラビリンス歯(46、50)を支持し、前記ラビリンス歯が、前記突出部と共に前記1つのホイールと前記1つのノズル列との間にあるホイールスペース内に流入する、前記流路からの漏洩流を減少させるためのシールを形成しており、前記プラットフォーム(40)の前縁(70)は、上流方向において半径方向内向きにフレア状にされて、上流側のノズル(24)の内側バンド(28)の後縁の半径方向内側に位置する

ことを特徴とするタービン。」

 

2.2 争点

 主引用例に副引用例の構成Xを適用することは容易か。

 

2.3 判示事項の独自見解

 主引用例に副引用例Xを適用することは容易ではない。

 理由は次の通りです。

 構成Xは、技術的意義A(タービン主流の漏れを抑制)と技術的意義B(タービン主流への漏れを抑制)のいずれかを得るためのものである。

 技術的意義Aは、技術的意義Bと大きく異なる。

 本件発明の構成Xは、技術的意義Aを得るためのものであるのに対し、副引用例の構成Xは、技術的意義Bを得るためのものである。

 また、主引用例では、どちらの技術的意義を発揮させるべきか不明である。

 したがって、主引用例に副引用例の構成Xを適用して技術的意義Aを有する本件発明に想到することは、容易でない。

 

弁理士 野村俊博

進歩性 性質又は機能が異なる引例の適用又は組み合わせの段階を2回経ることは、格別な努力を要するので、容易でない。

進歩性 性質又は機能が異なる引例の適用又は組み合わせの段階を2回経ることは、格別な努力を要するので、容易でない。

 

判例No. 22-2平成28年(行ケ)第10186号 審決取消請求事件

 

※以下は、独自の見解です。

 

1.実務上の指針

 性質又は機能が異なる引例の適用又は組み合わせの段階を2回経ることは、格別な努力を要するので、容易でない。

 

2.上記判例の判示事項

 下記の第1段階の適用をした上で、この適用がされた構成を基準に、下記の第2段階の適用をすることは、格別な努力を要するので、容易でない。

 

・第1段階

 引用例1(主引用例)では、筆記具は普通の筆記対象(例えば紙)に筆記できるのに対し、引用例2(副引用例)では、筆記具は、当該筆記具とセットにされる特別な筆記対象(熱変色層が形成された支持体)にだけ筆記できる点で、両者は、筆跡の形成に関する機能又は性質が異なる。

 このような筆跡の形成に関する機能又は性質の相違を考慮すると、当該機能又は性質に関連する引用例2の一部の内容「筆跡を消色させる摩擦体」を引用例1に適用することに当業者は容易に想到できない。

 

・第2段階

 引用例2の摩擦体は、温度によって発色状態または消消状態が保持されるインキ組成物によって形成された有色の筆跡を,摩擦熱により加熱して消色させるものであり,単に筆跡を消去する消しゴム等とは性質が異なる。

 したがって、引用例2の摩擦体に、筆記具の後部に消しゴムを装着するという他の引例の内容を適用することに、当業者が動機付けられることは考え難い。

 

 第1段階と第2段階の2回の適用について、上記判例では、次の『』内の通りに記載されている。

 

『引用発明1に引用発明2を組み合わせて「エラストマー又はプラスチック発泡体から選ばれ,摩擦熱により筆記時の有色のインキの筆跡を消色させる摩擦体」を筆記具と共に提供することを想到した上で,これを基準に摩擦体(摩擦具9)の提供の手段として摩擦体を筆記具自体又はキャップに装着することを想到し,相違点5に係る本件発明1の構成に至ることとなる。このように,引用発明1に基づき,2つの段階を経て相違点5に係る本件発明1の構成に至ることは,格別な努力を要するものといえ,当業者にとって容易であったということはできない。』

 

弁理士 野村俊博

進歩性 主引用例の発明と副引用例の発明とが、その機能の点で異なる場合、その機能に関連する副引用例の一部の内容を主引用例に適用することは容易でない。

進歩性 主引用例の発明と副引用例の発明とが、その機能の点で異なる場合、その機能に関連する副引用例の一部の内容を、主引用例に適用することは容易でない。

 

判例No.22平成28年(行ケ)第10186号 審決取消請求事件

※以下は、独自の見解です。

 

1.実務上の指針

 主引用例の発明と副引用例の発明とが、その機能又は性質(上記判例では筆跡の形成に関する機能)の点で異なる場合、その機能又は性質に関連する副引用例の一部の内容(上記判例では、筆跡を消す摩擦体)を、主引用例に適用することは容易でない。

 

2.上記判例の判示事項

 引用例1(主引用例)では、筆記具は普通の筆記対象(例えば紙)に筆記できるのに対し、引用例2(副引用例)では、筆記具は、当該筆記具とセットにされる特別な筆記対象(熱変色層が形成された支持体)にだけ筆記できる点で、両者は、筆跡の形成に関する機能又は性質が異なる。

 このような筆跡の形成に関する機能又は性質の相違を考慮すると、当該機能又は性質に関連する引用例2の一部の内容「筆跡を消色させる摩擦体」を引用例1に適用することに当業者は容易に想到できない。

 

 上記判例では、以下の「」内の通りに判示されている。

「引用発明1と引用発明2は,いずれも色彩記憶保持型の可逆熱変色性微小カプセル顔料を使用してはいるが,①引用発明1は,可逆熱変色性インキ組成物を充填したペン等の筆記具であり,それ自体によって熱変色像の筆跡を紙など適宜の対象に形成できるのに対し,②引用発明2は,筆記具と熱変色層が形成された支持体等から成る筆記材セットであり,筆記具である冷熱ペンが,氷片や冷水等を充填して低温側変色点以下の温度にした特殊なもので,インキや顔料を含んでおらず,通常の筆記具とは異なり,冷熱ペンのみでは熱変色像の筆跡を形成することができず,セットとされる支持体上面の熱変色層上を筆記することによって熱変色像の筆跡を形成するものであるから,筆跡を形成する対象も支持体上面の熱変色層に限られ,両発明は,その構成及び筆跡の形成に関する機能において大きく異なるものといえる。したがって,当業者において引用発明1に引用発明2を組み合わせることを発想するとはおよそ考え難い。」

 ※ここで、引用発明1に引用発明2を組み合わせるとは、引用発明2における筆跡を消色させる摩擦体を、引用発明1に適用することを意味すると理解する。

 

弁理士 野村俊博

進歩性 阻害要因

進歩性 阻害要因

 

判例No.21 平成17年(ワ)第6346号損害賠償等請求事件

※以下は独自の見解です。

 

1.実務上の指針

 主引用例に副引用例の内容を適用することにより対象発明に想到する場合に、次の(1)が言える場合だけでなく、次の(2)が言える場合にも、上記適用に阻害要因があるとして、対象発明は、主引用例と副引用例に対し進歩性があると言えると考える。

 

(1)主引用例に副引用例の内容を適用すると、主引用例の目的を達成できなくなる。

(2)主引用例に副引用例の内容を適用すると、主引用例の目的の達成度が低下する。

 

2.本件発明の内容

 上記判例の特許(特許番号第1970113号)の請求項1は、次のように記載されている。なお、請求項1の特許発明による損害賠償請求が認められている。

 

「【請求項1】体液吸収体と、透水性トップシートと、非透水性バックシートとを有し、前記透水性トップシートと非透水性バックシートとの間に前記体液吸収体が介在されており、

前記体液吸収体の長手方向縁より外方に延びて前記透水性トップシートと前記非透水性バックシートとで構成されるフラップにおいて腰回り方向に弾性帯を有する使い捨て紙おむつにおいて、

前記弾性帯は弾性伸縮性の発泡シートであり、かつこの発泡シートが前記透水性トップシートと前記非透水性バックシートとの間に介在され、前記体液吸収体の長手方向縁と離間しており、

前記トップシートのバックシートがわ面において、体液吸収体端部上と発泡シート上とに跨がってその両者に固着されるホットメルト薄膜を形成し、

さらに前記離間位置において前記ホットメルト薄膜が前記非透水性バックシートに前記腰回り方向に沿って接合され、体液の前後漏れ防止用シール領域を形成したことを特徴とする使い捨て紙おむつ。」

 

3.阻害要因

 上記判例では、引用文献5(特開昭61-207606号公報)に記載の発明(引用発明5)に引用文献1(特開昭61-100246号公報)に記載の発明(引用発明1)を適用ことには阻害要因があるとされた。

 

 引用発明5では、使い捨て衣類(例えばおむつ)において、弾性要素を、互いに離間した複数の接合点で、衣類の層に結合している。これにより、「弾性要素が縮んだ状態にあるとき各接合点間で外層にミクロなたわみを生じるような伸縮構造を提供する」ことにより、引用発明5の目的「裁縫仕立ての外観を与える」を達成している(ここで「」内は、引用文献5からの引用です)。

 また、引用文献5には、『「ホットメルト薄層」が「吸収芯」上と「弾性要素」上とに跨ってその両者に固着されている構成が記載されている。』(ここで『』内は、上記判決文からの引用です)

 

 このような引用発明5のホットメルト薄層に、引用発明1におけるホットメルト不透水性被膜を適用すると、このホットメルト不透水性被膜は面状に塗布されるものであるので、互いに離間した複数の接合点を形成できなくなり、その結果、上記のたわみを形成できなくなる。したがって、引用発明5に引用発明1を適用すると、引用発明5の上記目的を達成できなくなるので、この適用には阻害要因がある。

 

 これについて自分で検討してみると、引用発明5において、弾性要素の全ての範囲ではなく、ホットメルト薄層の存在範囲においてだけ、上記目的が達成されなくなるように思う。すなわち、上記適用により上記目的の達成度が低下すると思う。よって、主引用例に副引用例の内容を適用すると、主引用例の目的を達成できなくなる場合だけでなく、主引用例の目的の達成度が低下する場合にも、この適用には阻害要因があるといえると思う。

 

 阻害要因について上記判例の記載は、次の『』内の通りです。

 『引用発明5において,弾性要素の接合点は,弾性要素の伸縮状態に応じて衣類の外側層にミクロなうね又はたわみを生じさせるために設けられている。したがって,仮に,引用発明5の「ホットメルト薄層」に,引用発明1の「上記透水性表面シートの吸収体側表面上の,上記吸収性物品の少なくとも幅方向中央領域に,上記表面シートとバックシートとの一体的接合部分から吸収体上に臨む位置に亘って延在するホットメルト不透水性被膜」を適用すれば,引用発明5の弾性要素と身体側ライナー72及び吸収性の芯22とが,不透水性被膜といえる程度に接着されることになるので,上記うね又はたわみを形成することができなくなる。したがって,引用発明5に引用発明1を組み合わせることには阻害要因がある。』

 

4.審査基準

 阻害要因について、特許庁の審査基準には、次の「」内の記載がある。

 

「阻害要因の例としては、副引用発明が以下のようなものであることが挙げられる。

(i) 主引用発明に適用されると、主引用発明がその目的に反するものとなるような副引用発明(例1)

(ii) 主引用発明に適用されると、主引用発明が機能しなくなる副引用発明(例2)

(iii) 主引用発明がその適用を排斥しており、採用されることがあり得ないと考えられる副引用発明(例3)

(iv) 副引用発明を示す刊行物等に副引用発明と他の実施例とが記載又は掲載され、主引用発明が達成しようとする課題に関して、作用効果が他の実施例より劣る例として副引用発明が記載又は掲載されており、当業者が通常は適用を考えない副引用発明(例4)」

 

上記の判例は、上記審査基準の(i)または(iv)に該当すると思う。

 

弁理士 野村俊博

進歩性 除くクレーム

 

進歩性 除くクレーム

 

判例No.20平成20年(行ケ)第10065号審決取消請求事件

※以下は独自の見解です。

 

1.本件特許の記載

 特許第3835698号の請求項1の記載は、次の「」内と通り。ただし、下線部の箇所は、除くクレームとする補正箇所に変更した。

 

「フェノール樹脂又はイオン交換樹脂を炭素源として製造され、直径が0.01~1mmであり、ラングミュアの吸着式により求められる比表面積が1000m2/g以上であり、そして細孔直径7.5~15000nmの細孔容積が0.25mL/g未満である球状活性炭からなるが、但し、式(1):

    R=(I15-I35)/(I24-I35)      (1)

〔式中、I15は、X線回折法による回折角(2θ)が15°における回折強度であり、I35は、X線回折法による回折角(2θ)が35°における回折強度であり、I24は、X線回折法による回折角(2θ)が24°における回折強度である〕

で求められる回折強度比(R値)が1.4以上である球状活性炭を除く、

ことを特徴とする、経口投与用吸着剤。」

 

2.判示事項

「球状活性炭のうちフェノール樹脂又はイオン交換樹脂を炭素源として用いた場合において,そのR値が1.4以上であるときには,本件特許に係る発明と別件特許に係る発明(甲6発明)は同一であるということができる。そして,本件補正は,このR値が1.4以上である球状活性炭を特許請求の範囲の記載から除くことを目的とするものであるところ,上記本件当初明細書の記載内容によれば,本件補正は,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)によって,明細書,特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものではないと認めるのが相当である。そうすると,本件補正は,法17条の2第3項に違反するものではないから,補正要件違反の無効理由は認められない」

 ここで、「」内は上記判決からの引用です。

 

 また、上記判決は、審査基準と同じ趣旨の見地からなされています。

 

3.特許庁の審査基準

 特許庁の審査基準には、以下の各『』内の記載がある。

 

『以下の(i)及び(ii)の「除くクレーム」とする補正は、新たな技術的事項を導入するものではないので、補正は許される。

(i) 請求項に係る発明が引用発明と重なるために新規性等(第29条第1項第3号、第29条の2又は第39条)が否定されるおそれがある場合に、その重なりのみを除く補正』

 

上記(i)における「除くクレーム」は、第29条第1項第3号、第29条の2又は第39条に係る引用発明である、刊行物等又は先願の明細書等に記載された事項(記載されたに等しい事項を含む。)のみを除外することを明示した請求項である。

上記(i)の「除くクレーム」とする補正は、引用発明の内容となっている特定の事項を除外することによって、補正前の明細書等から導かれる技術的事項に何らかの変更を生じさせるものとはいえない。したがって、このような補正は、新たな技術的事項を導入しないものであることが明らかである。

なお、「除くクレーム」とすることにより特許を受けることができる発明は、引用発明と技術的思想としては顕著に異なり本来進歩性を有するが、たまたま引用発明と重なるような発明である。』

 

4.考察

 請求項に記載した発明の範囲の一部が、引用文献に記載の発明と重複する場合に、次の(1)を満たす場合には、当該一部を請求項から除く補正をすることによって、当該引用文献を、対象発明の新規性と進歩性を否定する検討材料から除外できると考える。

 

(1)請求項に記載した発明の技術的思想が、引用文献と顕著に異なる。

 

(考察1:新規性)

 請求項1の発明と引用文献1の発明は、次のように事項Aを有し、請求項1の発明の事項Bの概念が、引用文献1の発明の事項B’を含むとする。

 

請求項1の発明=A+B

引用文献1の発明=A+B’

 

 この場合、上記(1)を満たす場合、請求項1を次のように補正すれば、引用文献1の発明を、対象発明の新規性を否定する判断材料から除外できる。

 

「AとBを含み、但し、BがB’であることを除く装置」

 

(考察2:進歩性)

 上記考察1において、請求項1に従属する請求項2が、事項Cを含み、この事項Cが引用文献2に記載されている。

 引用文献1に引用文献2の事項Cを組み合わせて、請求項2に容易に想到できるとして請求項2の進歩性が否定されている。

 

請求項1の発明=A+B

請求項2の発明=A+B+C

引用文献1の発明=A+B’

引用文献2:Cが記載されている。

 

 請求項1を「AとBを含み、但し、BがB’であることを除く装置」のように補正すれば、「さらにCを含む、請求項1に記載の装置」と記載された請求項2の進歩性は、引用文献1、2によっては否定されなくなると考える。

 請求項1の補正「BがB’であることを除く」により、引用文献1は、進歩性の判断材料から除外されるからである。

 

(考察3:進歩性)

 そうすると、下記の独立請求項Xも下記の補正(除くクレームとする補正)により、進歩性が認められると考える。

 ここで、事項A,B,B’,Cは上記の通りである。

 

独立請求項X=A+B+C

引用文献1の発明=A+B’

引用文献2:Cが記載されている。

 

請求項Xの補正:「AとBとCを含み、但し、BがB’であることを除く装置」

 

 なお、知財高裁平成26 年9 月25 日判決平成25 年(行ケ)10266号には、次の「」内のように、進歩性欠如を解消するために除くクレームとする補正が可能なことが示唆されていると思う。
「原告は,本件訂正(『除くクレーム』による訂正)は進歩性欠如の無効事由を回避するために行われたものであるから訂正の手法を逸脱しており,これによって第三者が不測の不利益を被る可能性があるなどと主張する(前記第3の1(4))。しかるに,訂正は,特許法134条の2第1項ただし書に掲げる事項を目的とし,これによって新たな技術的事項を導入するものではなく,訂正後の発明がいわゆる独立特許要件(特許法134条の2第9項の準用する同法126条7項)を具備するなどの所定の要件を満たす場合に許容されるものであり,進歩性欠如の無効事由を回避するために行われたか否かはそれ自体として訂正の適否を左右するものではない」

弁理士 野村俊博

 

進歩性 特徴の表現が困難な場合には、その技術的意義を分かりやすく明細書に記載すれば、請求項の限定を少なくできる。

進歩性 特徴の表現が困難な場合には、その技術的意義を分かりやすく明細書に記載すれば、請求項の限定を少なくできる。

判例No.19 平成21年(行ケ)第10403号審決取消請求事件

※以下は独自の見解です。

1.本件発明のポイント
 特許第3290336号の請求項1は、次の「」内の通りに記載されている。

 「金属板を円筒状に曲成しその両端部を接合することにより形成した胴部と,この胴部の下縁部に結合した底板,及び胴部の上縁部に装着したバランスリングとを具備するものにおいて,フィルタ部材を具え,このフィルタ部材が上下の全長で前記胴部の接合部を内側より覆い,その上下の全長より充分に小さな寸法の隙間を前記バランスリング又は底板との間に余すことを特徴とする洗濯機の脱水槽。」

隙間の技術的意義:「フィルタ部材で直接胴部の接合部を見えなくでき」(すなわち外観が良くなり)、かつ、「フィルタ部材が熱収縮しても、これとバランスリングとの間、又は底板との間にはもともと隙間があり、それらが広くなるだけで、そこには洗濯物が挟まれるようなことはない」

ここで、「」内は、上記特許の明細書からの引用です。

2.判示事項

 『確かに,「隙間」ということば自体の一般的な意味は,辞書に記載されているとおり明確であるといえる。しかし,本件発明1を記載した請求項1においては,「フィルタ部材が上下の全長で前記胴部の接合部を内側より覆い,その上下の全長より充分に小さな寸法の隙間を前記バランスリング又は底板との間に余す」として,「隙間」について,フィルタ部材との関係で相対的に大きさを示し,バランスリング,底板及びフィルタ部材との関係で位置を示しているから,本件発明1における「隙間」の技術的意義は,特許請求の範囲の記載のみでは一義的に理解することはできず,明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌しなければ,その技術的意義を明確に理解することはできない。
 そして,明細書の発明の詳細な説明の記載に基づき,本件発明1の課題・課題の解決手段・作用効果との関係で「隙間」の技術的意義を考慮するならば,「隙間」は,「隙間における接合部が,バランスリング又はフィルタ部材の陰となって見えなくなるとともに,洗濯物が挟まれることのない大きさに形成されているもの」と認められる』ここで、『』は上記判決からの引用です。
 その結果、本件発明(請求項1)の明確性と進歩性が認められている。

 なお、本件特許による損害賠償が別の判決(平成 23年 (ワ) 8085号 各損害賠償等請求事件)で認められている。

3.実務上の指針
 明確に表現することが困難な特徴(上記の判例では、洗濯物が挟まれないようにする隙間)の数値範囲を請求項で限定せずに、特許とするためには、その技術的意義を分かりやすく明細書に記載する。
 言い換えると、技術的意義を分かりやすく明細書に記載しておけば、当該特徴(隙間)を、余計な限定(数値限定)なしで引例との相違点にして、当該請求項を特許にできる。
 これは、少なくともプロパテント側の日本では言えそうに思える。

 それでも、争いを避けるために(又は外国での確実な特許取得のために)、可能であれば、当該特徴(隙間)の数値範囲などを従属請求項や当初明細書に定義しておくことが好ましい。
 例えば、上記特許では、隙間の数値範囲や、フィルタ部材の全長に対する隙間の割合などを、複数の段階で従属請求項や当初明細書に記載しておくことが好ましい。

 また、上記特許に関して「隙間」の目的を請求項に記載することも1つの選択肢になりえる。例えば、「フィルタ部材とバランスリングとの間に洗濯物が挟まれないようにするための隙間」のような表現を独立請求項1に記載することも1つの選択肢になりえる。技術的意義(作用効果)を認めてもらうためには、その作用効果を得るという目的を請求項で特定することで足りる場合もあるからである(本ブログのNo.1進歩性 使用時の状態の相違 目的の特定 - hanreimatome_t’s blog

を参照)。

弁理士 野村俊博

進歩性 主引用例の部材Aの必須条件a(不燃性)と副引用例の部材Bの性質b(難燃性)とが似ていても、条件aを部材Bが満たすのかが副引用例から不明である以上、部材Aを部材Bに置き換える動機づけはない。

進歩性 主引用例の部材Aの必須条件a(不燃性)と副引用例の部材Bの性質b(難燃性)とが似ていても、条件aを部材Bが満たすのかが副引用例から不明である以上、部材Aを部材Bに置き換える動機付けはない。

判例No.18 平成27年(行ケ)第10233号 審決取消請求事件

 

※以下は、この判決についての独自の見解です。

 

1.本件発明と主引用例との相違点

 特許第5142055号の請求項1に係る本件発明では、透明不燃性シートからなる防煙垂壁において、透明不燃性シートが不燃性材料の規格を満たす。

 

(具体的には、請求項1に記載されているように、透明不燃性シートは、不燃性材料の規格である「輻射電気ヒーターから透明不燃性シートの表面に50kW/m2の輻射熱を照射する発熱性試験において,加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり,且つ加熱開始後20分間,最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えない」を満たす)。

 

 これに対し、主引用例(甲1:米国特許第5240058号明細書)では、「樹脂で被覆したガラス繊維織物(透明不燃性シートに対応)」が透明であるとは記載されていない。

 

2.審決の判断の概要

 副引用例(甲6:特開平5-123869号公報)には、「ウエルディングカーテン材」は難燃性であると記載されており、「ウエルディングカーテン材」は透明でもあることも記載されている。

 この副引用例について、『実施例1の「ウエルディングカーテン材」は、上記(ウ)で検討したとおり、防煙垂壁に求められる「不燃性」を備えている蓋然性が高く、仮に「不燃性」を備えていないとしても、「不燃性」を備えるようにすることは、当業者が適宜なし得る単なる設計的事項である。』と判断している。

 ここで、『』内は、審決(無効2014-800024号)からの引用です。

 

3.判示事項

 主引用例(甲1)への副引用例(甲6)の適用について、『甲6文献には,同ウエルディングカーテン材が不燃性規格を満たすものであるか否かについてはその記載がなく,甲6発明のウエルディングカーテン材が不燃性規格を満たすかどうかは不明である。防煙垂壁において,不燃性規格を満たすべきことが周知の課題であったことからすると,当業者が,甲1発明の防煙垂壁として,甲6発明のウエルディングカーテン材を組み合わせる動機付けに乏しいといわざるを得ない。』と判断している。ここで、『』内は、上記判決からの引用です。

 

 また、副引用例(甲6)において、ウエルディングカーテン材が不燃性規格を満たすことが記載されていない点について、『甲6文献からこの点が明らかではない以上,同ウエルディングカーテン材が不燃性規格を満たす蓋然性が高いとまではいえず,当業者が甲6文献の実施例1の再現実験をして,同ウエルディングカーテン材が不燃性規格を満たしているかどうかを確認するのが当然であるということもできない』と判断している。ここで、『』内は、上記判決からの引用です。

 

 上記を理由の1つとして、本件発明の進歩性を否定した審決が取り消されている。

 

4.実務上の指針

 権利化しようとする対象発明の進歩性が、下記(1)の論理付けにより否定されそうな場合、下記(1)の論理付けが最もらしくても、下記(2)に該当する場合には、諦めずに例えば下記(3)のような反論をする。

 

(1)主引用例において部材Aが条件a(不燃性)を満たすことが必須であり、副引用例の部材Bが条件aに似た性質b(難燃性)を有しており、主引用例において部材Aに部材Bを適用すると(部材Aを部材Bに置き換えると)対象発明に至る。

 

(2)部材Bが条件aを満たすかが副引用例からは不明である。

 

(3)副引用例において部材Bが条件aを満たすかが不明である以上、主引用例において、条件aを必須とする部材Aを、部材Bに置き換える動機付けはない。

 

弁理士 野村俊博

進歩性 無理な用語解釈を前提として進歩性が否定されていないかを確認する。

進歩性 無理な用語解釈を前提として進歩性が否定されていないかを確認する。

 

判例No.17-2 平成28年(行ケ)第10040号 審決取消請求事件

 

※以下は、この判決についての独自の見解です。

※以下において、『』内は、上記の判決文からの引用です。

 

1.判決の概要

 本件発明の進歩性を否定した審決の取り消し理由として、サービスという用語の解釈に無理があることを挙げている。

 

2.審決での用語解釈

 本件発明と引用発明との一致点が、本件発明と引用発明とは、所定の場合に、所定のサービスの実行を許可している点で一致しているとしている。

 これに関して、サービスを次のように解釈している。

 「サービス」とは,「サービス要求と,それに対し,何らかの利便を提供する行為の総称」である。

 

3.判示事項

『被告は,前記の「サービス」とは,「サービス要求と,それに対し,何らかの利便を提供する行為の総称」であると主張する。前記の定義は,その文言上,①第1の主体が,第2の主体に対し,何らかのサービスを要求する行為,②第2の主体が,第1 の主体からの何らかのサービスの要求に対し,第1の主体又は第3の主体に対し,何らかの利便を提供する行為という,2 種類の行為を含んでいる。

 「サービス」は,「①奉仕,②給仕。接待。③商売で値引きしたり,客の便宜を図ったりすること。④物質的生産過程以外で機能する労働。用益。用務。⑤(競技用語)サーブに同じ。」(広辞苑第6版)と解されているのであって,前記の行為のうち,「第2の主体が,」「第1の主体又は第3の主体に対し,何らかの利便を提供する行為」は,「サービス」と表現され得るが,「第1の主体が,第2の主体に対し,何らかのサービスを要求する行為」は,「サービス」と表現され得るとは考えられず,「サービス」を,前記の2種類の行為を一個の概念に包括する総称と定義することには,無理がある。』

 

 このような無理な用語解釈を理由の1つとして、審決が取り消されている。

 

4.実務上の指針

 権利化しようとする対象発明の進歩性が、次の(1)のように否定されている場合、次の(2)の反論をする。

 

(1)対象発明の進歩性を否定する論理が、無理な用語解釈を前提としている。

 

(2)用語解釈に無理があることを、辞書(広辞苑)の定義に基づいて反論する。

 

 弁理士 野村俊博

進歩性 引用文献が特定の技術に限定されているのに、この限定を超えて引用文献の記載事項を上位概念化して認定することは許されない。

進歩性 引用文献が特定の技術に限定されているのに、この限定を超えて引用文献の記載事項を上位概念化して認定することは許されない。

 

判例No.17平成28年(行ケ)第10040号 審決取消請求事件

※以下は、この判決についての独自の見解です。

 

1.判決の概要

 審決では、引用文献の記載事項を上位概念化した内容と、本件発明の事項を上位概念化した内容とが一致する点を、引用文献に記載の発明と本件発明との一致点としているが、引用発明の記載事項を上位概念化して認定することは許されない。

 

2.本件発明の要点

 第1通信装置に記憶されたマルチメディアデータが第2通信装置によってアクセスされるべきかを決定する方法において、第1通信装置と第2通信装置との間の距離測定を実行し,測定された距離が事前に規定された距離間隔の範囲にある場合に、第2通信装置によるマルチメディアデータへのアクセスを許可する(特願2010-103072号の請求項1の概要)。

 

3.審決の概要

 本件発明では、第1通信装置と第2通信装置との距離が規定範囲にある場合に、第1通信装置に記憶されたマルチメディアデータへの,第2通信装置によるアクセスを許可している。このように、上記距離が規定範囲にある場合に、第1通信装置は、第2通信装置にマルチメディアデータへアクセスさせるというサービスの実行を許可している。

 

 引用発明(甲1:特開平9-170364号公報)では、車両側無線装置と携帯型無線装置との距離が規定範囲にある場合に、車両側無線装置が,携帯型無線装置からの応答信号に基づいて,ドアの解錠指令を送出している。このように、車両側無線装置は、ドアの解錠指令の送出というサービスの実行を許可している。

 

 したがって、本件発明と引用発明とは、上記距離が規定範囲にある場合に、所定のサービスの実行を許可している点で一致している。

 

4.判示事項

 引用発明において、車両側無線装置が搭載された車のドアの解錠指令の送出を決定することを、所定のサービスの実行を許可することとして抽象化し、このように上位概念化(抽象化)された動作を、引用発明の記載事項(構成要素)であると評価することは許されない。その理由として、次の(A)(B)を挙げています。

 

(A)「甲1発明は,車両のドアに限定されないものの,ドアの施解錠に限定されたものであるといえる。」ここで、「」内は上記判決文からの引用です。

 

(B)サービスという用語の解釈に無理がある。詳しくは、本ブログの判例No.17-2http://hanreimatome-t.hatenablog.com/entry/2017/01/24/123746を参照。

 

5.実務上の指針

 まず、別の判例(平成14年(行ケ)第546号 審決取消請求事件)では、「進歩性が問題となる場合における一致点の認定は,相違点を抽出するための前提作業として行われるものである。相違点を正しく認定することができるものであるならば,相違点に係る両技術に共通する部分を抽象化して一致点と認定することは許され,」と判断されています(ここで「」内は当該別の判例からの引用です)。

 

 しかし、今回の判例のように、次の(1)に該当する場合には、その旨を反論できる。

(1)引用文献が特定の技術に限定されているのに、この限定を超えて引用発明の記載事項が上位概念化して認定されている。

弁理士 野村俊博

進歩性 主引用例において、その構成要素に、当該要素と目的及び使用態様が異なる、他の引用例の構成を組み合わせることは容易でない。

進歩性 主引用例において、その構成要素に、当該要素と目的及び使用態様が異なる、他の引用例の構成を組み合わせることは容易でない。

 

判例No.16平成28年(行ケ)第10011号 審決取消請求事件

 

※以下は、この判決についての独自の見解です。

 

1.本件特許発明の要点

 本件特許(特許第4553629号)の請求項1に係る発明(以下、本件特許発明という)は、以下の特徴A,Bを有し、特徴Bにより以下の効果Cを奏する。

 

 特徴A:

 掘削により削り出される掘削土が、ケーシング内で吹き上げられて、ケーシングの排土口から外部へ排出される場合において、掘削土飛散防止装置は、前記排土口を介して前記ケーシングの外側へ排出された掘削土が衝突するようになっている衝突部と、ケーシングを囲む筒状部とを含み、衝突部に衝突した掘削土がケーシングと筒状部との間を落下するようになっている。

 

 特徴B:

 掘削土飛散防止装置は、さらに、蛇腹状の側壁を有する筒状部の下端近傍に,その一端が連結されたワイヤーと,前記ワイヤーの他端が連結されている巻き取り装置と,を有している。巻き取り装置がワイヤーを巻き取りまたは繰り出して、垂下された状態の前記筒状部の上端から下端までの長さが調整される。

 

 特徴Bによる効果C:

「ワイヤーの巻き取り・繰り出し操作を通じて蛇腹部分(筒状部)の伸縮を繰り返すことによって、落下して来る途中で筒状部の内壁に付着した掘削土を効率的に払い落とすことが可能になる。また、ダウンザホールハンマの掘進に伴って筒状部の長さを調整することができるので、蛇腹部分(筒状部)の下端側が地表上で重なり積もることを防止することが可能になる。」

 

2.相違点について

 特徴Bは、引用発明(特開2001-32274号公報)との相違点であるが、引用例6(特開平11-107661号公報)に記載されている。

 

3.争点 引用発明に引用例6の構成を組み合わせることが容易か

(目的の相違)

 引用例6のジャバラ筒を設ける目的は、次の効果(1)(2)を達成することにある。

(1)オーガスクリュー外周を覆うことにより、砂はジャバラ筒を伝って落下しオーガスクリュー3の上部からの土砂の飛散は防止される。

(2)ワイヤーの一端をジャバラ筒の下端近傍に連結し,他端をウインチに連結させている。この構成で、ウインチの捲上げ捲戻しでジャバラ筒の下端を上下動させることにより、ジャバラ筒下端と地表との間を所定の高さに保持できる。したがって、ジャバラ筒下端と地表との間を通して、オーガスクリューの羽根上の土砂の取除き作業を行える。

 

 引用発明の伸縮カバー(34)を設ける目的は,次の効果(3)を達成することにある。

(3)伸縮カバー(34)は,中空コンクリート杭(1)を覆うことにより、押し上げられた土砂(17)を,中空コンクリート杭(1)との間を通って落下させ土砂の飛散を防止する。

 

 以上により、引用発明の伸縮カバー(34)を設ける目的は、引用例6においてジャバラ筒を設けることにより上記効果(2)を達成するという目的と異なる。

 

(使用態様の相違)

 引用例6のジャバラ筒4は,削孔作業中,その下端と地表との間に所定の高さを有するのに対し,引用発明の伸縮カバー(34)は,掘削時,その下端が接地している。

 よって、両者の使用態様は互いに異なる。

 

4.判示事項

 筒状部(ジャバラ筒)の下端を所定の高さに維持することを前提とした引用例6の構成(伸縮カバーとこれを上下させるワイヤー及びウインチ)を,筒状部の下端を接地させる引用発明に適用することは、直ちに想到できるものではない。

 上記の目的の相違と使用態様の相違を考慮すると、引用例6の構成を引用発明の伸縮カバー(34)に組み合わせようとする動機付けは存在しない。

 したがって,引用発明において本件特許発明の特徴Bを備えるようにすることを,引用例6に基づいて当業者は容易に想到することができない。

 

5.実務上の指針

 以下の前提(1)の場合に、以下の理由(2)により、対象発明の進歩性が否定されたら、以下の反論(3)ができる場合には、その反論をする。

 

(1)対象発明と主引用例との相違点は、対象発明が特徴Xを有していることにあるが、特徴Xは副引用例に記載されている。

 

(2)主引用例(本判例では引用発明)において、その一部の構成要素(本判例では伸縮カバー)に副引用例(本判例では引用例6)の特徴X(本判例では伸縮カバーとこれを上下させるワイヤー及びウインチ)を組み合わせることにより、対象発明に容易に想到できる。

 

(3)主引用例の上記構成要素と、副引用例の上記構成とは、それを設ける目的が互いに異なるだけでなく、その使用態様(使用状態)も互いに異なるので、主引用例の上記構成要素に副引用例の上記構成を組み合わせることの動機付けはない。したがって、主引用例において特徴Xを備えるようにすることを,副引用例に基づいて当業者は容易に想到することができない。

 

弁理士 野村俊博

請求項の記載 発明の構成要素の名称を単に「部材」ではなく「~材」とすると、技術的な観点から何らかの限定が「~」にあると解釈され得る。

請求項の記載 発明の構成要素の名称を単に「部材」ではなく「~材」とすると、技術的な観点から何らかの限定が「~」にあると解釈され得る

 

判例No.15平成21年(ネ)第10006号補償金等請求控訴事件

 

※以下は、この判決についての独自の見解です。

※以下において、『』内は、上記の判決文または特許第3725481号からの引用です。

 

1.争点 構成要件の充足性

 本件特許(特許第3725481号)の「縫合材」を、被告製品の構成〈d〉(帯片)は文言上充足するか。

 

 本件特許の「縫合材」は、請求項1において『前記金属製の外殻部材の接合部に貫通穴を設け、該貫通穴を介して繊維強化プラスチック製の縫合材を前記金属製外殻部材の前記繊維強化プラスチック製外殻部材との接着界面側とその反対面側とに通して前記繊維強化プラスチック製の外殻部材と前記金属製の外殻部材とを結合した』と記載されている。

 

 被告製品の構成〈d〉は、『透孔7を介して各透孔7毎に分離した炭素繊維からなる短小な帯片8を前記金属製外殻部材1の上面側のFRP製上部外殻部材10との接着界面側とその反対面側の前記金属製外殻部材1の下面側のFRP製下部外殻部材9との接着界面側とに一つの貫通穴を通して,上面側のFRP製上部外殻部材10及び下面側のFRP製下部外殻部材9と各1か所で接着し,前記FRP製上部外殻部材10と金属製外殻部材1とを結合してなる』と認められる。

 

2.「縫合材」の意味

『単に「部材」などの語を用いることなく,「縫合材」との語を選択した以上,その内容は,単なる「部材」とは異なり,何らかの限定をして解釈されるべきところ,その限定の内容を技術的な観点をも含めて解釈するならば,「縫合材」とは,「金属製外殻部材の複数の(二つ以上の)貫通穴を通し,かつ,少なくとも2か所で繊維強化プラスチック製外殻部材と接合(接着)する部材」であると解するのが相当である。』

 

なお、「縫合材」は、請求項1において通常の意味とは異なる意味で用いられており、請求項1の記載からは、「縫合材」の技術的意義を一義的に確定することができないので、明細書の記載も考慮して上記のように解釈されている。

 

 

3.結論

 被告製品の「帯片」は,少なくとも2か所で繊維強化プラスチック製外殻部材と接合(接着)するものではないので、「縫合材」であることの要件「少なくとも2か所で繊維強化プラスチック製外殻部材と接合(接着)する」を文言上充足しない。

 

4.実務上の指針

 請求項1において構成要素の名称を単に「部材」とせずに、「~材」や「~部材」とする場合には、当該修飾語「~」により限定がなされていると解釈され得る。

 そのため、構成要素の名称を「~材」や「~部材」とする場合には、当該「~」として、発明に必須の事項(例えば機能)を表わす修飾語を用いるようにする。

 

弁理士 野村俊博

進歩性 引用例において、ひとまとまりの構成の一部のみを把握することはできない。

進歩性 引用例において、ひとまとまりの構成の一部のみを把握することはできない。

 判例No.14 平成18年(行ケ)第10138号審決取消請求事件

 

※以下は、この判決についての独自の見解です。
※以下において、「」内は、上記の判決文からの引用です。

 

1.判決の概要

 引用例1(特開平2-308106号公報)に開示された「ひとまとまりの構成」のうち一部を除外して、引用例1に記載の発明を把握することはできない。

 

2.判決の具体的内容

 引用例1に記載された発明(引用例1発明)は、下記の構成Aにより下記の作用効果Bを達成して下記の目的Cを達成するものである。

 

(構成A)

 液晶表示素子において、光源の背後にミラーを設け、光源の前方に反射型直線偏光素子を設け、ミラーと反射型直線偏光素子との間に位相板を設けている。

 

(作用効果B)

 光源からの光のうち第1偏光成分は、反射型直線偏光素子を通過して前方へ射出される。一方、光源からの光のうち第2偏光成分は、反射型直線偏光素子で反射される。しかし、この第2偏光成分は、位相板を通過してミラーで反射され再び位相板を通過する過程で位相板により第1偏光成分の光に変わって、反射型直線偏光素子へ入射する。したがって、この第1偏光成分は、反射型直線偏光素子を通過して前方へ射出される。よって、光源の光を、非常に高効率に1種類の第1偏光に変換して射出できるという効果が得られる。

 

(目的C)

 「従来の直線偏光光源がランダムな偏光のうち半分の偏光しか利用できず残りの半分を捨ててしまっており効果が悪いという問題点を解決して,従来の直線偏光光源の効率の飛躍的な向上を目的とする」

 

 したがって、引用例1発明では、その目的Cを達成するために、反射型直線偏光素子とミラーと位相板は必須であるので、反射型直線偏光素子とミラーと位相板は「ひとまとまりの構成」である。

 引用例1において、当該「ひとまとまりの構成」から、ミラーと位相板を除外して、反射型直線偏光素子を含む液晶表示素子のみを把握することはできない。

 よって、引用例1において、ミラーと位相板に代えて、引用例2の導波路を用いることは容易という論理は、引用例1発明の把握を誤ったことを前提にしているので、不適切である。

 

3.実務上の指針

 特許出願に係る発明の進歩性が、下記の(1)により否定されそうな場合、下記の(2)に該当する場合には、下記の(3)の主張ができる余地があると考える。

 

(1)主引用例において、一部の構成を副引用例に記載された構成に置き換えることにより、特許出願に係る発明に容易に想到できる。

(2)主引用例において、前記一部の構成は、主引用例に記載の発明の目的を達成するために必須である「ひとまとまりの構成」に含まれている。

(3)主引用例(上述では引用例1)において、その目的を達成するために必須である「ひとまとまりの構成」の一部を他の構成に置き換えることは、容易とはいえない。当該「ひとまとまりの構成」は、目的達成のために一体不可分のものであるため、当該「ひとまとまりの構成」から一部を除外して主引用例に記載の発明を把握できないからである。

 

 また、 特許出願に係る発明の進歩性が、下記の(4)により否定されそうな場合、下記の(5)に該当する場合には、下記の(6)の主張ができる余地があるように思える。

 

(4)副引用例において、一部の構成を主引用例に記載された構成に適用することにより、特許出願に係る発明に容易に想到できる。

(5)副引用例において、前記一部の構成は、副引用例に記載の発明の目的を達成するために必須である「ひとまとまりの構成」に含まれている。

(6)副引用例において、その目的を達成するために必須である「ひとまとまりの構成」の一部のみを抽出することは容易でない。当該「ひとまとまりの構成」は、目的達成のために一体不可分のものであるため、当該「ひとまとまりの構成」から一部のみを抽出した構成を、副引用例において把握できないからである。

 

弁理士 野村俊博