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進歩性 「容易の容易」は容易でない

進歩性 「容易の容易」は容易でない

判例No.5 平成27年(行ケ)第10149号 審決取消請求事件

※以下は、この判決についての独自の見解です。

※以下において、「」内は、上記の判決文からの引用です。

 

1.判決のポイント
 引用発明において、自明の課題を解決するために周知例に開示された構成を採用することは容易である。
 この採用によって生じる別の課題を解決するために別の周知技術を採用することは、「容易の容易」に該当し容易ではない。
 当該別の課題は、引用発明自体について認識できないからである。

 

2.本件発明の要点
特徴:港湾,河川,湖沼などのヘドロや土砂をシェルで掴むクラブバケットにおいて、「シェルの上部にシェルカバーを密接配置するとともに,前記シェルカバーの一部に空気抜き孔を形成し」ている。
作用効果:掴んだヘドロや土砂は、シェルカバーでシェル内に密閉されるので、水中で撹乱しない。シェルが水中を降下する際には、シェル内の水が空気抜き孔から上方に抜けるので、シェルの水中での抵抗を減少させて降下時間を短縮できる。

 

3.相違点について
 本件発明では、「シェルの上部にシェルカバーを密接配置するとともに,前記シェルカバーの一部に空気抜き孔を形成し,該空気抜き孔に,シェルを左右に広げたまま水中を降下する際には上方に開いて水が上方に抜けるとともに,シェルが掴み物を所定容量以上に掴んだ場合にも内圧の上昇に伴って上方に開き,グラブバケットの水中での移動時には,外圧によって閉じられる開閉式のゴム蓋を有する蓋体を取り付け」るのに対して,引用発明においては,そのように構成されているか否か不明である。

 

4.進歩性の判断
 シェルで掴んだ土砂や濁水等の流出を防止するという自明の課題を把握して、この課題を解決するために、「シェルの上部にシェルカバーを密接配置する」ことは、周知技術である。
 また、シェルの上部が密閉されている場合に、シェル内部にたまった水や空気を排出するために、シェルの上部に空気抜き孔を形成することは周知技術である。
 したがって、引用発明において「シェルの上部にシェルカバーを密接配置する」ことは容易であり、シェルの上部が密閉されている場合にシェルの上部に空気抜き孔を形成することも容易である。
 このような「容易の容易」の過程を経ることで本件発明に想到するが、この「容易の容易」は容易でない。引用発明自体について、シェル内部にたまった水や空気を排出する必要があるという課題を当業者が認識することは考え難いからである。

 

5. 実務上の指針
 引用発明から本件発明に想到するために、引用発明に公知技術を二段階で適用すること(「容易の容易」)が必要な場合であって、一段階目の適用をしたことによって生じる課題Pを解決するために二段階目の適用をすることになる場合には、次のように進歩性を主張する余地がある。
 進歩性の主張:
 上記課題Pは、引用発明自体について認識できないので、引用発明に二段階の適用をすることは、「容易の容易」に該当し容易ではない。

弁理士 野村俊博