進歩性 物の発明に係る請求項 構成要素の動作の特定
進歩性 物の発明の請求項において、発明の構成要素の動作は相違点として考慮される。
判例No.6 平成27年(行ケ)第10164号 審決取消請求事件
※以下は、この判決についての独自の見解です。
※以下において、「」内は、上記の判決文からの引用です。
1.判決のポイント
本件発明において相違点に係る構成(すなわち下記の特徴)は,固有の作用を奏するものであるので,単なる設計的事項にすぎないものであるということはできない。
2.本件発明のポイント
概要:レセプタクルコネクタに嵌合したケーブルコネクタの後側の部分をレセプタクルコネクタから持ち上げようとすると、両者が互いに当接することによりレセプタクルコネクタはケーブルコネクタから抜き出せない。一方、レセプタクルコネクタに嵌合したケーブルコネクタの前側の部分をレセプタクルコネクタから持ち上げると、両者が互いに当接せず、レセプタクルコネクタはケーブルコネクタから抜き出せる。
より詳しくは次の通り。
特徴:ケーブルコネクタとレセプタクルコネクタとを互いに嵌合接続するために、一方にはロック突部が設けられ、他方にはロック溝部と該溝内へ突出する突出部とが設けられる。嵌合時に、ロック突部が嵌合方向で上記ロック溝部内に進入して、ケーブルコネクタの姿勢が、前端側が持ち上がった上向き傾斜姿勢から嵌合終了の姿勢へ変化する。この姿勢の変化に応じて上記突出部に対する上記ロック突部の位置が変化する。
効果:ケーブルコネクタの姿勢の変化に応じて上記突出部に対する上記ロック突部の位置が変化する構成により、嵌合状態において、「ケーブルコネクタが後端側を持ち上げられて抜出方向に移動されようとしたとき,上記ロック突部が上記抜出方向で上記突出部と当接して該ケーブルコネクタの抜出を阻止」し、嵌合状態において、ケーブルコネクタの前端部を持ち上げることにより「上記ロック突部と上記突出部との上記当接可能な状態が解除されて,上記ケーブルコネクタの抜出が可能となる」。
3.相違点
上記の特徴は、引用発明に記載されていないので、相違点となる。
4.進歩性の判断
上記特徴により得られる上記効果は、本件発明に固有のものであるため、上記特徴は、単なる設計的事項にすぎないものであるということはできない。
5.実務上の指針
物の発明の請求項において、発明の構成要素の動作は相違点として考慮される。
本件発明の請求項1は、物の発明の請求項であり、この請求項には、上記特徴として、記載A「上記姿勢の変化に応じて上記突出部に対する上記ロック突部の位置が変化する」がある。この記載Aは、互いに当接し合うロック突部と突出部を、その動作により特定している。
このように、ロック突部と突出部をその動作により特定した記載Aが相違点として認められ、その結果、本件発明の進歩性が否定されなかった。
したがって、物の発明の請求項において、発明の構成要素を構成(形状や位置)により特定したくない場合には、構成要素を、その動作により特定することもできる。
弁理士 野村俊博