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進歩性 構成が同じに見えても技術的意義が異なれば特許になる

進歩性 構成が同じに見えても技術的意義が異なれば特許になる

 

判例No.9平成27年(行ケ)第10242号 審決取消請求事件

 

※以下は、この判決についての独自の見解です。

※以下において、「」内は、上記の判決文からの引用です。

 

1.判決の概要

 本件発明について請求項1と明細書の両方から把握される技術的意義が、引用発明に記載されておらず、二重瞼の形成原理が両発明の間で全く異なる。

 したがって、本件発明は、引用発明から容易に想到できるものではない。

 

2.本件発明のポイント

 本件発明の請求項1は、次の通りに記載されている。

 

特徴:「【請求項1】延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した細いテープ状部材に,粘着剤を塗着することにより構成した,ことを特徴とする二重瞼形成用テープ。」

 

効果:二重瞼形成用テープを、延伸させた状態で瞼に押し当てて、粘着剤によりそこに貼り付け、そのまま両端の把持部を離すと、テープ状部材の弾性的な収縮力によりテープ状部材を瞼に食い込ませて二重瞼を形成できる。

 

3.相違点

 本件発明の「延伸可能」と「二重瞼形成用テープ」とが互いにどのような関係にあるのかは、請求項1の記載から把握できないので、明細書を参酌することは許される(リパーゼ事件判決:注1)。

 この参酌により、「延伸可能」と「二重瞼形成用テープ」とは、「延伸させたテープ状部材の収縮力によりテープ状部材を瞼に食い込ませて二重瞼を形成する」という関係があるといえる。

 本件発明は、この関係を有するものと認定できる。

 引用発明のテープ細帯は、この関係を有するものではないので、本件発明と相違する。

 

 注1:発明の要旨認定においては、特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないなどの特段の事情がある場合に限って、明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌することが許される。

 

4.進歩性の判断

 上記相違点に関し、引用発明は、二重瞼を形成する原理が本件発明と全く異なる。

 また、引用発明のテープ細帯においても、延伸後に弾性的な収縮力が発生しているとしても、このテープ細帯の収縮力の程度では,本件発明のように,テープ状部材を瞼に食い込ませて二重瞼を形成できるとは思われない。

 したがって、本件発明は、引用発明から容易に想到できるものではない。

 

5.実務上の指針

 権利化しようとする発明(権利化対象発明)と引用発明との構成が同じであっても、権利化対象発明の構成要素の物理的性質の程度(上記判例では、延伸後の弾性的な収縮力の程度)の違いにより、権利化対象発明の技術的意義が引用発明には無いと言える場合には、次の対応(1)をとる。

 

(1)権利化対象発明と引用発明との間で、構成要素の物理的性質の程度(上記判例では収縮力の程度)が異なるので、引用発明では、権利化対象発明の技術的意義(上記判例ではテープ状部材を瞼に食い込ませて二重瞼を形成できること)が無いと主張する。

 

 また、スムーズな権利化や争いを無くすために、次の(2)の対応をすることも、請求の範囲の書き方の1つになりえる。

 

(2)上記の技術的意義が請求の範囲から読み取れない場合には、上記の技術的意義を請求項に反映する。上記判例では、『テープ状部材を瞼に食い込ませて二重瞼を形成するための』というような目的の特定を請求項1に反映させる(本ブログのNo.1を参照:進歩性 使用時の状態の相違 目的の特定 - hanreimatome_t’s blog)。

 

弁理士 野村俊博