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進歩性 用途限定 用途発明 他の物との関係で特定した物の構成は相違点になる

進歩性 用途限定 用途発明 他の物との関係で特定した物の構成は相違点になる

 

判例No.10 平成27年(行ケ)第10260号 審決取消請求事件

 

※以下は、この判決についての独自の見解です。

※以下において、「」内は、上記の判決文からの引用です。

 

1.判決の概要

 本件発明は、鍵の発明であり、鍵とは別体の物(鍵が挿入されるロータリーディスクタンブラー錠)との関係で特定された構成を有する。

 この構成により、本件発明は引用発明から容易であるとはいえない。

 

2.本件発明の要点

 特徴:ロータリーディスクタンブラー錠用の鍵において、鍵のブレードの平面部に複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪みが形成され、ロータリーディスクタンブラー錠の鍵孔に鍵を挿入した時に、これらの窪みが、それぞれ、複数のロータリーディスクタンブラーの係合突起と係合して、これらタンブラー群の揺動角度を変化させてロックが解除される。

 

効果:「従来のレバータンブラー錠における合鍵と異なり,ブレードの端縁部に形成されたV字形の鍵溝ではなく,窪みの深さによって鍵違いを得るようにしたので,一の窪み25と隣接する他の窪み25の間隔を従来の鍵溝間のそれより短くすることができ,したがって,タンブラーの数を増大させ,その分鍵違いを多くすることができる」

 

3.相違点

 本件発明は、請求項の記載から次の構成を有しているといえる。

 

 本件発明の構成:

 鍵の窪みは,その深さとブレードの幅方向の位置が,ロータリーディスクタンブラーの揺動による円弧に沿ったものである。

 

 このように鍵とは別体のロータリーディスクタンブラーとの関係で特定される上記構成を、引用発明が有しているかは不明である。

 したがって、上記構成は、引用発明との相違点になる。

 

4.判決における進歩性の判断

 「本件発明及び引用発明は,いずれも鍵の発明ではあるものの,それぞれの錠に対応する合鍵としての発明であるから,錠の構造を捨象して,鍵の形状のみによって容易想到性を判断することはできない。」

 したがって、上記の相違点(上記構成)は、引用発明や他の文献によっても埋められないので、本件発明は、引用発明から容易とはいえない。

 

5.実務上の指針

 上記の判決では、本件発明が鍵の発明であっても、鍵とは別体の物(鍵が挿入されるロータリーディスクタンブラー錠)との関係で特定された構成により、引用発明との相違点が認定されている。

 本件発明を記載した請求項において、鍵の構成が、ロータリーディスクタンブラー錠との関係で記載され、かつ、「ロータリーディスクタンブラー錠用の鍵。」のように用途が限定されている。

 したがって、ある物の発明を請求項に記載する場合に、当該物の構成を、請求項において他の物との関係により特定できる。

 この点は、特許庁の審査基準にも、次のように記載されている。以下の『』内は、用途限定に関する特許庁の審査基準の記載である。

 

『用途限定が付された物が、その用途に特に適した物を意味する場合は、審査官は、その物を、用途限定が意味する形状、構造、組成等(以下この項(3.)において「構造等」という。)を有する物であると認定する(例1及び例2)。その用途に特に適した物を意味する場合とは、用途限定が、明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識をも考慮して、その用途に特に適した構造等を意味すると解釈される場合をいう。』

 

弁理士 野村俊博