請求項の記載 発明の構成要素の名称を単に「部材」ではなく「~材」とすると、技術的な観点から何らかの限定が「~」にあると解釈され得る。

請求項の記載 発明の構成要素の名称を単に「部材」ではなく「~材」とすると、技術的な観点から何らかの限定が「~」にあると解釈され得る

 

判例No.15平成21年(ネ)第10006号補償金等請求控訴事件

 

※以下は、この判決についての独自の見解です。

※以下において、『』内は、上記の判決文または特許第3725481号からの引用です。

 

1.争点 構成要件の充足性

 本件特許(特許第3725481号)の「縫合材」を、被告製品の構成〈d〉(帯片)は文言上充足するか。

 

 本件特許の「縫合材」は、請求項1において『前記金属製の外殻部材の接合部に貫通穴を設け、該貫通穴を介して繊維強化プラスチック製の縫合材を前記金属製外殻部材の前記繊維強化プラスチック製外殻部材との接着界面側とその反対面側とに通して前記繊維強化プラスチック製の外殻部材と前記金属製の外殻部材とを結合した』と記載されている。

 

 被告製品の構成〈d〉は、『透孔7を介して各透孔7毎に分離した炭素繊維からなる短小な帯片8を前記金属製外殻部材1の上面側のFRP製上部外殻部材10との接着界面側とその反対面側の前記金属製外殻部材1の下面側のFRP製下部外殻部材9との接着界面側とに一つの貫通穴を通して,上面側のFRP製上部外殻部材10及び下面側のFRP製下部外殻部材9と各1か所で接着し,前記FRP製上部外殻部材10と金属製外殻部材1とを結合してなる』と認められる。

 

2.「縫合材」の意味

『単に「部材」などの語を用いることなく,「縫合材」との語を選択した以上,その内容は,単なる「部材」とは異なり,何らかの限定をして解釈されるべきところ,その限定の内容を技術的な観点をも含めて解釈するならば,「縫合材」とは,「金属製外殻部材の複数の(二つ以上の)貫通穴を通し,かつ,少なくとも2か所で繊維強化プラスチック製外殻部材と接合(接着)する部材」であると解するのが相当である。』

 

なお、「縫合材」は、請求項1において通常の意味とは異なる意味で用いられており、請求項1の記載からは、「縫合材」の技術的意義を一義的に確定することができないので、明細書の記載も考慮して上記のように解釈されている。

 

 

3.結論

 被告製品の「帯片」は,少なくとも2か所で繊維強化プラスチック製外殻部材と接合(接着)するものではないので、「縫合材」であることの要件「少なくとも2か所で繊維強化プラスチック製外殻部材と接合(接着)する」を文言上充足しない。

 

4.実務上の指針

 請求項1において構成要素の名称を単に「部材」とせずに、「~材」や「~部材」とする場合には、当該修飾語「~」により限定がなされていると解釈され得る。

 そのため、構成要素の名称を「~材」や「~部材」とする場合には、当該「~」として、発明に必須の事項(例えば機能)を表わす修飾語を用いるようにする。

 

弁理士 野村俊博