進歩性 一般的要請に基づいて周知技術を引用発明に適用する場合に、当該周知技術が引用発明の前提になじまない場合には、当該適用は容易ではない。
判例No. 42平成18年(行ケ)第10488号審決取消請求事件
進歩性 一般的要請に基づいて周知技術を引用発明に適用する場合に、当該周知技術が引用発明の前提になじまない場合には、当該適用は容易ではない。
以下は、上記判例に関する独自の見解です。
1.実務上の指針
引用発明に周知技術を適用することにより、本願発明に容易に想到できる旨の拒絶理由通知を受けた場合に、次の(1)を検討する。
(1)引用発明の前提が、周知技術になじまないものであるかを確認する。すなわち、引用発明の前提となる制御又は構成が、周知技術の制御又は構成に反するものであるかを確認する。
(2)引用発明の前提が周知技術になじまなない場合には、周知技術を引用発明に適用する阻害要因があるので、当該適用は容易ではない。
2.前審である審決で認定された相違点
本願発明では、発光素子がPWM調光駆動されるに対し、引用発明(国際公開第01/45470号に記載の発明)では、発光素子のPWM調光駆動については記載されていない。
3.上記判決で認定された引用発明の内容
引用発明では、商用交流電流から、その電圧が一定値以上となる一部期間でのみ電力をLEDランプに供給することにより高効率な電力供給を実現する構成において、LEDランプに流れる電流を一定にすること、すなわち、LEDランプの連続的な点灯を前提としている。
4.争点
当業者にとって、周知技術のPWM調光技術を引用発明に適用することが容易であるか否か。
5.判示事項
引用発明では、LEDランプに流れる電流が一定となるように制御されることを前提としているのに対し、PWM調光駆動では、LEDに流れる電流をオン・オフさせる制御を行うのであるから,制御の方法において両者はなじまない。
したがって、発光強度を調節するという一般的要請があり、その手段としてPWM調光技術が周知であったとしても、引用発明にPWM調光技術を適用することを妨げる事情(阻害要因)がある。
よって、一般的要請に基づいて周知技術のPWM調光技術を引用発明に適用することは容易でない。
弁理士 野村俊博