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進歩性 使用時の状態の相違 目的の特定

判例No. 1平成27年(行ケ)第10122号 審決取消請求事件

※以下は、独自の見解です。

※以下において、「」内は、上記の判決文または特許出願(特願2010-537149号)からの引用です。

 

 本件発明の進歩性が認められたのは、次の理由によると思われる。

理由:「水フィルター」を、光量の調整と「生物組織」(皮膚)の冷却との両方に用いるという着想(アイデア)が、どの引用例にも記載されていなかった

 

(1)本件発明のポイント

特徴:光を「生物組織」(患者の皮膚)に当てて「生物学的影響をもたらす」(治療を行う)装置において、「生物組織」へ向かう光の通過領域に「水フィルター」が配置されている。

効果:「水フィルター」により、「生物組織」に照射される光量を調整でき、かつ、「生物組織」を冷却できる。

 

(2)本件発明と引用例1との相違点

 光の一部を吸収するフィルターは、本件発明では上記「水フィルター」であるのに対し、引用例1では「プリズム6及びプリズム6の側面のコーティング」である。

 

(3)上記の相違点に関する引用例2の内容

 引用例2には、凍結した液体をフィルターとして用いる「懸濁フィルター」は、皮膚の冷却にも使用されている。

 しかし、「懸濁フィルター」は、フィルターとして作用するのは、凍結されている時だけであるので、液体状態でフィルターとして作用する「水フィルター」と異なる。

 

(4)進歩性の判断

 液体状態の水を、フィルターとして用いるとともに皮膚の冷却にも用いることは、いずれの引用例にも記載も示唆もされていない。

 よって、本件発明は進歩性を有する。

 

(5)実務上の指針

使用時の状態の相違について主張や補正をする>

 フィルターとして用いるとともに皮膚の冷却にも用いるものは、本件発明では、液体状態のフィルターであるのに対し、引用例2では、凍結状態のフィルターであった。

 この相違により進歩性が認められている。

 

目的の特定を請求項に記載する

 請求項1における記載「前記水フィルターは,前記生物組織を冷却するために構成され」により、「生物組織」の冷却という作用効果が認められている。すなわち、「水フィルター」の具体的な配置(「水フィルター」が「生物組織」に接触可能な位置にあること)を特定することなく、この作用効果を得るという目的の特定「前記生物組織を冷却するために構成され」により当該作用効果が認められている。

 したがって、作用効果を認めてもらうためには、その作用効果を得るという目的を請求項で特定することで足りる場合もありえる。

 例えば、請求項1では、目的を特定し、従属請求項では、その目的を得るための具体的な構成を特定することも、請求の範囲の書き方の1つになりえる。

 

2016年7月 弁理士

野村俊博