権利範囲 請求項において明確な用語も明細書を参酌して解釈される。

権利範囲 請求項において明確な用語も明細書を参酌して解釈される。

 

判例No. 31 平成18年(ネ)第10007号損害賠償請求控訴事件

 

以下は、上記判例について検討した独自の内容です。

 

1.実務上の指針

 侵害訴訟の場面では、特許発明の権利範囲に関して、特許請求の範囲に記載された用語の意義は、下記(1)の場合だけでなく、下記(2)の場合でも、明細書及び図面を考慮して解釈される。

 

(1)特許請求の範囲に記載された用語が、特定の意味で使用されている抽象的かつ機能的な表現であるため,その技術的意義が当業者にとって理解できない場合

 

(2)特許請求の範囲の文言が一義的に明確である場合

 

 上記(2)のように、特許請求の範囲の文言が一義的に明確であるであっても、特許請求の範囲の用語の意義は、明細書及び図面を考慮して解釈されるので、特許請求の範囲で使用する用語の定義や関連の記載を、当該用語が希望の権利範囲内となるように記載しておく。

 特に、権利範囲の解釈に発明の課題及び作用効果が参酌されるので(権利範囲の解釈に発明の課題及び作用効果が考慮される - hanreimatome_t’s blog)、当該課題を解決し当該作用効果を得るための最小の必須要件を慎重に検討して確認し、当該最小の必須要件に関連させながら、請求項の文言(用語や表現)についての説明や定義を明細書に記載する。

 例えば、「透液性」という用語は、液体を少しでも透過させれば、透液性を有するのか否かが理解できないので、明細書の記載(例えば実施例)を参酌して必要以上に解釈される可能性が高いと思われる。そのため、どの程度の透液性であれば、発明の課題を解決し発明の作用効果が得られるのかを、明細書に記載しておく。例えば、明細書において、透液性を、課題及び作用効果と関連させて記載する。可能であれば、更に、意図する権利範囲となるような透液性を表す数値範囲を一例として明細書に記載しておく。

 

2.上記判例の判示事項の独自解釈

 上記判例では、請求項1の用語「読出順序データ」が明細書を参酌して限定解釈された結果、被製品が請求項1の権利範囲外となった。

 次の「」内は、上記判例からの抜粋です。

 

「当該特許発明の特許請求の範囲の文言が一義的に明確なものであるか否かにかかわらず,願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の記載及び図面を考慮して,特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈すべきものと解するのが相当である。」

 

弁理士 野村俊博